防災の日だからこそ知っておきたいレジリエンス住宅
いつもご覧いただきありがとうございます。那須塩原市の工務店、斎藤建設です。
この記事を投稿している9月1日は「防災の日」にあたります。防災の日は1923年(大正12年)9月1日に発生した関東大震災ちなんで制定されました。
今日は「防災の日」に関連して「レジリエンス住宅」のお話をさせて頂きたいと思います。
「レジリエンス」とはもともとは、工学や物理学の世界で使われていた言葉だそうです。物質や物体に対して外から力が加わると変形します。力が加わったときにどれくらいその力を吸収できることができるか、また、どれくらい外からの力を取り除いて元の形に戻ろうとすることができるか、それが工学や物理学の世界で使われている「レジリエンス」だそうです。
レジリエンスはその後、自然や動物の生態環境学や、人間の社会環境システム、そして心理学でも使われるようになりました。経済的なレジリエンス、都市国家のレジリエンス、そして心理学的レジリエンスなどです。
いずれの分野においてもレジリエンスは、変形から元の形に戻ろうとする「弾力性」、変化や変動に対する反応としての「復元力」や「回復力」という意味で使われています。
ではレジリエンス住宅とはどういったものなのでしょうか。
レジリエンス住宅とは、平常時にはエネルギー使用量を抑えながら、非常時には自立的にエネルギー供給が行える住宅のことをさします。
スマートハウスの進化系という位置づけで、HEMS、蓄電池、太陽光発電、コージェネレーション設備などの最新エネルギーの供給設備を備え、平時にはゼロエネルギーを実現し、非常時には蓄電池、太陽光発電、コージェネレーション設備などからエネルギーを供給し、自立的な生活ができるのがレジリエンス住宅です。
レジリエンス住宅においてもやはり大切になってくるのが、断熱性、気密性、耐震性といった基本性能です。これらに加えて太陽のエネルギーを最大に生かすパッシブデザインも大変重要なものになってきます。
災害が発生してライフラインから断ち切られても、たとえ真冬の寒い時期であっても、断熱性気密性がきちんと確保されていて、太陽の力を効率的に活用できるパッシブデザインが取り入れられていれば、暖房機器が使えなくても太陽さえ出ていれば自然室温だけで、部屋を温める事が出来ますし、断熱気密がしっかりしていれば太陽の出ていない夜間などにおいても、外に熱が出って行ってしまう熱の量を少なくすることができます。
夏においては日射遮蔽が出来ていれば、室温の上昇を少しでも抑える事が出来るでしょう。
蓄電池やコージェネレーション設備のエネルギー供給能力は無限ではありません。ですので、断熱気密性能を省エネ性を向上させることで、蓄電池やコージェネレーション設備への依存度を下げる事が大切になってきます。
地震への備えも大切です。建物に損傷を与える震度6弱以上の地震、平成の時代には5.1か月に1回というハイペースで起きています。このことからも、複数回の震度7の地震に耐えられる「耐震等級3」の性能がとても大切になってきます。
以前にもブログ「熊本地震から3年が経ちました」にも書きましたが、
耐震等級1に対して
「耐震等級2」は耐震等級1の1.25倍の水準
「耐震等級3」は耐震等級1の1.5倍の水準
耐震等級が上がるに従って耐震性能も上がっていきます。
構造塾の佐藤実先生による「熊本地震現地調査報告」では、耐震等級1と3の間には地震後にそれぞれの家の人の生活の質に、大きな開きがある事が見えてきました。
耐震等級1の家では、1回目の地震で住んでいる人の生命は守られました。しかし、家は損傷が激しく、これ以上住み続けることはできず、それまでの平穏な生活を奪い、財産を守ることはできませんでした。
耐震等級3の家では多少の損傷はありましたが倒壊は1棟もなく、しかも、住み慣れた我が家に住み続ける事ができ、家という財産も守る事ができました。
つまり、不自由な避難所暮らしをする必要が無かったのです。
レジリエンス住宅、言い方を変えれば「心が折れない住宅」という事なのだと思います。
地震が発生した場合には構造が損傷をしない、災害が発生してライフラインから断ち切られても、家族が心細い思いをせずに災害前に近い形で生活を続けられることができる。そしてできるだけ短時間で、災害前の生活にも近づけることができる。これがレジリエンス住宅なのです。
前向きな気持ちを持って生活し続ける事が出来る、それが家という「生活を入れる器」においてとても大切な事ではないでしょうか。